運動方針

2022~2023年度運動方針

安心社会へ 新たなチャレンジ~すべての働く仲間とともに「必ずそばにいる存在」へ~

総論

Ⅰ.連合運動の現在地

1.コロナ前からの課題に向き合う

 2019年秋、結成30周年を迎えた連合は、連合ビジョン「働くことを軸とする安心社会 -まもる・つなぐ・創り出す-」を提起した。これまで連合が運動の基軸としてきた価値観を継承・深化させ、2035年を展望した社会像を描き出した。

 提起の背景には、この間、市場原理主義が世界を席巻してきた中、わが国における不安定雇用の拡大と中間層の収縮、貧困・格差の拡大がある。また、加速する人口減少・超少子高齢化をはじめ、遅々として進まない社会的セーフティネットの機能強化、個別企業の競争力確保の取り組みを超越する産業構造の転換とギグエコノミーの進展、地域を育むコミュニティの劣化など、社会経済の持続可能性に対する強い問題意識がその裏付けとなっている。

 労働力は社会経済の成長と発展に欠かせないが、わが国は人口減少下にあり、情報技術のさらなる革新は、相対的に前向きに受け止められてきた。しかし、飛躍的な生活者の利便性向上が期待される一方、労働の未来にもたらす負の側面が不安視されている。人間本位の技術革新のあり方とその追求が一層、重要性を増している。

 一方、世界では気候変動に伴う自然災害の頻発・激甚化、紛争やテロ、そして、一般市民への弾圧や人種差別の拡大など、極めて深刻な事態が顕在化している。これらの課題解決には、国際社会の協力と行動が不可欠であり、これら課題の背景に潜む、自然環境に対する不寛容、短期的な視座にもとづくポピュリズム的な政治勢力の台頭、国家間、民族・人種間などの対立と分断など、国際社会が自ら招いてきたとも言える現実から目を逸らすことはできない。 こうした中、SDGs(持続可能な開発目標)の推進や、世界全体の包摂的な成長と平和の実現に向けた動きへの期待が高まっている。その中で、社会課題の解決に私たちの労働運動はいかなる貢献ができるだろうか。私たちには、労働運動という社会的資源を、多様性にもとづく誰もが安全・安心にくらせる社会づくりに活かし、健全な民主主義を牽引していく必要がある。

2.浮き彫りになった課題を直視する

 世界各地の新型コロナウイルスの感染拡大は社会の様相を一変させ、日本においても、長期化するコロナ禍の影響は多くの働く仲間とその家族を直撃し、雇用と賃金・労働条件が脅かされ続けている。一方で、社会的セーフティネットの脆弱性もより浮き彫りになり、とりわけ、パート・有期・派遣契約、フリーランスなどの形態で働く人、女性、外国人、学生など多くの仲間が困難な状況に立たされている。また、テレワークは、働く自由度を高める一つの働き方として急速に広まったが、反面、個々人の評価の仕方など人事制度上の整理や機器導入の費用負担のあり方といった課題、オンラインを前提とした日常的コミュニケーション不足への対応、さらには家庭内DV(ドメスティック・バイオレンス)の温床化への危惧など、定着に向けた課題も少なくない。

 すべての人の人権が尊重され、性別・年齢・国籍・障がいの有無・就労形態などにかかわらず、誰もが平等・対等で、多様性を認め合いながら公正・公平に働くことのできる「フェアワーク」の実現のためには、社会変革は待ったなしである。

 コロナ禍は、デジタルインフラ整備の遅れから適切な時機に必要な給付・支援を届けることができない決定的な課題を明らかにした。個人情報の適切な保護をはかりつつ、デジタル化の恩恵を享受できる社会基盤の整備は、感染症拡大や災害時はもとより、誰もが取り残されることない社会の基盤に位置付けられるべきである。

 さらに、私たちは大きな変革の波に直面している。加速するDX(デジタルトランスフォーメーション)や、地球温暖化対策として政府が宣言した2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル」の動向が、産業・雇用、そして社会のあり方を根本から変えていくことが想定されている。

 こうした変革の中で生じる負の影響を最小限にとどめ、働く人にとってより良い雇用や働き方を実現する機会としていかなければならない。「公正な移行」の実現のためにも、適切な給付・職業訓練・就労支援がパッケージとなった「雇用と生活のセーフティネット」「失業なき労働移動」の具体化は急務である。

 大都市圏への人口集中と地域の疲弊、地域間格差がもたらす経済・行政の課題も浮き彫りとなった。持続可能で魅力ある地域づくりに向けた地域活性化の取り組みが重要であると同時に、国と地方の役割分担、地域における「公共」の重要性とそのあり方が、今、改めて問われている。

 コロナ禍にあって、各国のトップリーダーの言動が注目を集めてきた。

 それは、個々人の尊厳や多様性を尊重しながら社会を統合する基盤として、そして、進歩と安定の調和をはかりつつ、様々な課題克服に挑戦するマインドを育むうえで、政府への信頼が危機突破にいかに重要かを示す証左と言える。我が国においては、一人ひとりの命とくらしを守り抜くことを基軸に連合と理念を共有する政治勢力の確立と発展は、コロナ禍で浮き彫りとなった課題克服を展望する上で不可欠と言える。

 こうした認識を多くの仲間と共有し、「持続可能性」と「包摂」を基底に置いた連合ビジョンの実現を念頭に、運動を一層前進させていくことが、連合の旗のもとに集う私たちに課せられている。

Ⅱ.第17期連合秋田の運動の基軸

1.新しい運動スタイルの構築に向けて

 秋田県においても、コロナ禍において多くの働く仲間が厳しい状況に置かれている。私たちはこの現状を直視し、雇用の維持と創出、賃金・労働条件の向上、社会的セーフティネットの確立などに全力を挙げていかなければならない。そのためにも、運動スタイル自体を新しく進化させなければならない。

 コロナ禍の中、今後の労働運動、日々の諸活動を考えるうえで重要な契機となる。組合員、単組、構成組織、地域協議会、地域連絡会、連合秋田・連合本部間の意思疎通において、お互いの熱意が真に共有され、運動・活動の結集力につながっているか、さらに、日々の取り組みの発信が現場の一人ひとりに届き、理解・共感・参加に結びついているかなど、総点検を行い、共有したことを活かす必要がある。従来から、組合員の労働運動への参加意識の希薄化、役員の人財確保の困難さ、男女平等参画の遅れなど、多くの組織において活動基盤の課題が叫ばれてきた。とりわけ、コロナ禍の中で、労働組合・連合運動に対して大きな期待が高まりつつある。

 これまで労働組合活動と距離があった働く仲間、あるいは連合の存在を知り得なかった働く仲間との関係づくりは、連合運動の新たなフィールドを開拓するうえで極めて重要な意味を持ってくる。だからこそ、対面とオンラインそれぞれの特性を適切に融合させ、ハイブリッドを含めた「緩やかなつながり合い」も視野に、変化に対応した労働運動のスタイルを確立し、職場にあっても地域にあっても、すべての働く仲間にとって「必ずそばにいる存在」として、その位置づけを高めていく。

 私たちが長年にわたり積み上げてきた集団的労使関係の重要性はなお一層増している。働く仲間の声を代表する中核的存在として、また、職場を、産業を、社会を、地域を変えていく原動力として、そして、健全な生産性運動に裏打ちされた労働運動の魅力を発信する拠点として、その役割を担う必要がある。活動に対する組合員のさらなる参加と、組織拡大により集団的労使関係の輪を広げていくことは、労働運動の持続可能性のみならず、すべての働く仲間の連帯と安心を土台とした新たな経済、社会を展望する上で極めて重要な要素であることを再確認したい。

 新たな運動スタイルを希求する上で、私たち自身がチャレンジ意識をもって運動の価値を高める必要がある。同時に、秋田県労福協や東北労働金庫秋田県本部・こくみん共済coop秋田推進本部といった労働者自主福祉事業団体、多様な知見を有するNPOやオピニオンリーダーとの連携強化、地域に根ざす「連合プラットフォーム」の充実など、私たちがめざす社会の実現には、政労使の三者による社会対話のみならず、幅広い社会の構成者と積極的に対話を重ねることが不可欠である。連合秋田に対する社会からの見え方を真摯に受け止め、かつ、連合秋田が担う機能・政策・運動をより多方面に発信していく好循環が第17期の運動に求められている。連合秋田は、職場をまもり、地域をつなぎ、そして、ジェンダー平等と多様性に満ちた社会を創り出していく。

2.3期6年の「改革パッケージ」のさらなる推進

 連合秋田はめざす社会を実現するために、連合運動を再構築し、実践するための基盤を強化するべく、4つの改革パッケージ(①運動領域と重点化、②組織体制・運営、③人財の確保と育成、④財政)を第16期運動方針で掲げた。

 その後、2年間の取り組みの中で、連合本部と連携して、限られた運動資源の効率的な運営に努めてきた。また、「執行委員会」と各局を中心に労働相談と組織化に関わる体制強化、次代の運動を担う人財育成に向けた検討、「連合秋田プラットフォーム」の推進を含め、財政課題について討議に移行するなど、着実な前進をはかってきた。

 第17期は、改革パッケージの実行・検証サイクルとして設定した3期6年の取り組みの中間期である。最終年度(2024~2025年度)における検証と「連合ビジョン」の内容点検に向けて、これまで以上に注力していくタイミングになる。これまでの取り組みの進捗を踏まえ、引き続きの課題は今次運動方針に反映しながら、「働く仲間一人ひとりをまもる」「働く仲間・地域社会をつなぐ」「社会・経済の新たな活力を創り出す」という、連合ビジョンで掲げた連合運動の再構築の取り組みを強化する。 第17期は、新たな運動スタイルの構築と改革パッケージの実践を運動の両輪としてチャレンジする重要期であり、その結果を働く仲間の力、その総和を高める運動につなげていく。

Ⅲ.今期2年間の具体的な運動方針

【重点分野1~3】

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【推進分野1~4】

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Ⅳ.運動分野を支える基盤強化

  持続可能な連合運動の推進に向けて、組織・財政、労働者自主福祉運動の推進など運動基盤の整備・強化の課題解決に継続して取り組むとともに、組織内のコミュニケーションの充実をはかる。

1.将来の持続可能性に向けた財政のあり方

(1)現在、連合で検討されている、新たな連合会費制度への移  行について、構成組織、連合秋田は、納得と丁寧な合意形成を前提として、連合本部との今後の議論に参画していく。引き続き、組織討議期間、導入準備期間を通じて残された課題の解決に向けた相互の対話を重ね、連携・協力していく。

(2)効率的・効果的な財政運営に努めることはもとより、会計不祥事の再発を防止するため、連合全体での会計管理体制(内部統制)強化や透明性向上に継続的に取り組む。

2.連合全体の組織力の強化とコミュニケーションの充実

(1)DXの進展、コロナ禍などの環境変化も踏まえ、これからの労働組合の役割、活動スタイル、運動への参加促進のあり方などについて、検討していく。

(2)構成組織との対話活動や諸会議に際しては、基本、対面が望ましいが、WEB会議システムなども活用して開催機会や参加方法の多様化をはかる。

(3)連合秋田の街宣・街頭行動を中心に運動資源の有効活用や効果的な活動の遂行などを随時点検する。

3.地域運動の活性化と組織力・連帯活動の強化、労働者自主福祉運動の推進

(1)地域協議会の活動については、再構成した「全国で統一的に取り組む2つのコア活動(①連合組織内の連携を強化するための活動、②地域で働くすべての仲間を支えるための活動)」と「各地域の特色を活かした活動」において、全国台で足並みをそろえた取り組みとしていく。

(2)「地方ブロック連絡会の運営要綱」にもとづき、地方・地域における連合運動への積極的な参加を促すとともに、組織拡大での連携、ジェンダー平等の推進、若手リーダーの交流などに参画していく。

(3)DXの進展、コロナ禍などの環境変化も踏まえ、これからの労働組合の役割、活動スタイル、運動への参加促進のあり方などについて、検討していく。

(4)連合本部は、担当窓口による構成組織や地方連合会との日常的なコミュニケーションを充実する。構成組織や地方連合会との組織的な対話活動に際しては、WEB会議システムなども活用して開催機会や参加方法の多様化をはかる。

(5)連合秋田の“局会議”を中心に運動資源の有効活用や効果的な活動の遂行などを随時点検する。

(6)東北労働金庫秋田県本部、こくみん共済coop秋田推進本部、秋田県労働福祉協議会、(財)秋田県労働会館との連携・連帯を継続し、「労働者自主福祉運動」の推進のため、理事会・推進委員会に役員を派遣するなど責任の一旦を担う立場でかかわりを深めていく。また、政策・制度の実現のため、特に県民的課題について「必ずそばにいる存在」として、地域社会運動を喚起し、それぞれの取り組みを下記のとおり積極的に進めていく。

秋田県労働福祉協議会の運動の推進

 「すべての働く人の幸せと豊かさをめざして連帯・協同で安心・共生の福祉社会をつくろう !」をスローガンとする秋田県労福協は、勤労者の福祉向上、貧困問題解消に向けた取り組み、各種研修会、講座やセミナーなど、社会福祉政策全般にわたって意欲的に事業を展開している。とりわけ、本年度は設立60周年を迎え、記念事業に取り組むなど、精力的に運動を推進している。連合秋田は秋田県労福協組織のさらなる充実と、東北労働金庫・こくみん共済coopなど会員団体の事業基盤の拡大、推進機構との連携を強化する。地区労福協運動についても、引き続き、労福事業団体、労働団体が一体となり、開かれた労福協活動を展開する。

 また、コロナ禍の今だからこそ、「労働者福祉運動の出番」との気概で「誰ひとり取り残さない」SDGsの精神に基づき、社会的連帯を深め、共助の輪を広げ、雇用劣化や奨学金問題に加え、「新型コロナウイルス感染症の総合的対策」や「フードドライブ活動」など、連合秋田の運動と連動しながら進めていく。

【労働金庫運動の推進】

 労働金庫は、「働く人の夢と共感を創造する協同組織の福祉金融機関」を基本理念に事業を推進し、その活動を着実に拡大してきた。

 東北労働金庫の2021年度からスタートした第7期中期経営計画は、「人口減少」「マイナス金利政策の長期化」「IT・デジタル技術の進展」「新型コロナウイルス感染症による生活や働き方への影響」など、大きく変化する環境に対応する「ろうきん運動」の強化と「誰一人取り残さない金融包摂」の実現をめざしていくこととしている。

 現在東北労働金庫では、コロナ禍における勤労者の生活支援のため、低利な労金業態統一融資制度や自治体提携融資制度のほか、融資利用者の返済条件変更相談などを取組んでいる。さらに会員・推進機構と協働した生活応援運動を推進し、ローンの一本化や高金利からの借り換えによる家計収支改善を図るとともに、ライフイベントや老後生活の備えとして組合員の資産形成に向けた提案活動を展開している。

 労働金庫が福祉金融機関としての役割を発揮するため、引き続き連携を強める中から「ろうきん運動」に磨きをかける必要がある。連合秋田、構成組織は、推進委員会の活動強化をはじめ、組合活動の中でのろうきん運動の重要性を再認識できる具体的な対策・目標を、機関会議や大会決議を通じて進める。

【こくみん共済coop運動の推進】

 こくみん共済coopは、「みんなでたすけあい、豊かで安心できる社会づくり」の理念にもとづき活動を展開している。

 2020年度は、New-Zetwork(2018年度~2021年度中期経営政策)の3年目として、Zetworkスタイル(お役立ち発想と共創活動にもとづく新しい事業と運動)の実践による「深く」「長く」を追求し、その力をもって「広く」事業と運動の発展をめざした活動を進めた。

 また、新ブランド(こくみん共済coop)の2年目として、豊かで安心できる社会に向け、多くの人と「たすけあいの輪をむすぶ」活動を展開した。

 2021年度は、長引くコロナ過は経済に深刻さが増すなか、東日本大震災から10年を経過した今も自然災害は激甚化・多発化し、先を見通せない日々が続いている。そうした状況だからこそ、共済(たすけあう仕組み)を通じて組合員・生活者一人ひとりに寄り添い、より身近な存在として組合員・生活者が抱える不安を少しでも解消していかなければならない。 

 そのために協力団体との共創活動・お役立ち推進により、保障分野別(人・車・家)の重点推進共済を設定し、もしもの保障点検活動の展開、災害時無保障者をなくす取り組みにより、組合員の保障の充実にむけた推進活動を展開する。

 連合秋田は、こくみん共済coopと連携し、引き続き労働者自主福祉運動のさらなる拡大・発展と推進基盤の強化をはかる。

【労働会館の利用拡大推進】

 秋田県労働会館は完成から38年が経過した。この間の構成組織や労福事業団体の協力に感謝する。この間、遊休フロアの改装等による貸室化やテナント化、Wi-Fi利用によるWeb会議増加への対応など、利用者のニーズに合った会館運営を進めてきた。

 とりわけ、コロナ禍の社会情勢において、会館利用率は多くの組織の利用により回復に向かっている。今後とも労働者と労働組合の殿堂「秋田県労働会館」として役割を担えるよう、引き続き、積極的な利活用の拡大・推進に支援をお願いする。

以 上