Q&A

このQ&Aは、これまで労働相談ダイヤルに寄せられた一般的な相談について、ポイント・解説とあわせて掲載しています。労働相談ダイヤルの基本は、法律や制度の説明などを除けば、可能な限り相談者本人からの電話もしくは直接面談することを主旨としています。このQ&Aを参考にしていただき、問題が発生している場合は「なんでも相談ダイヤル」にお電話をください。

Q:求人票・求人広告に記載されていた労働条件と実際の労働条件が違っていた。

A:求人票・求人広告に記載された労働条件は直ちに労働契約の内容にはなりません。求人票・求人広告の内容だけでなく、採用時の労働条件通知書の確認が必要です。

【解説】公共職業安定所(ハローワークなど)および職業紹介事業者、労働者の募集を行う者および募集受託者、求人者等に対して、労働条件の明示が義務づけられています。求人票・求人広告に記載された労働条件は、使用者が労働条件を示して労働契約の申し込みを募集するものであり、直ちに労働契約の内容になるものではありません。しかし、裁判例より、労働契約締結の際に労働条件が明示されていなければ、当事者間においてそれと異なる合意をするなど特段の事情がない限り、求人票・求人広告に記載された労働条件が労働契約の内容となると解釈されています(職業安定法第5条の3)。

Q:採用内定が取り消された。

A:採用内定を安易に取り消すことはできません。

【解説】判例では、採用内定が通知された時点で「始期付き・解約権留保付きの労働契約」が成立したものと解釈されています。内定取り消しが認められるのは、「客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できる」場合のみに限られ、これを満たさない内定取り消しは、解雇権の濫用にあたります。

Q:就業規則を見せてほしいと頼んだら、「うちの会社にはない」と言われた。

A:常時10人以上の労働者を使用する事業場には、作成・届出周知義務があります。

【解説】就業規則の作成・届出義務があるのは「常時10人以上の労働者を使用する」事業場であります。労働者数が時期によって変動する場合もありますが、「常態として」10人以上であるか否かで判断します。労働者数にはパートタイマーや契約労働者、アルバイト等雇用されるすべての者が含まれます。規模10人未満であっても作成・周知が望ましいとされています。

Q:「アルバイトだから」と、地域別最低賃金より少ない時給700円しかもらえない。

A:地域別最低賃金は、原則としてすべての労働者に適用されます。

【解説】都道府県のすべての労働者に適用される「地域別最低賃金」と、当該地域(都道府県)の特定産業の基幹的労働者に適用される「特定(産業別)最低賃金」があります。いずれも時間額で示されます(最賃法第3条)。最低賃金額に満たない賃金の労働契約は、その部分が無効となり、2年前に遡って使用者に最低賃金額との差額の支払いを請求できます(最賃法第4条、労基法第115条)。

Q:改装期間中は出勤しなくてよいと言われ、賃金が支払われなかった。

A:使用者の都合による休業の場合は、休業手当の支払を要します。

【解説】使用者の責に帰すべき事由により休業する場合は、休業期間中は少なくとも平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません(労基法第26条)。全額請求できる場合もあります(民法第536条2項)。

Q:朝早くから夜遅くまで働かされている。

A:1日8時間・週40時間であり、これを超える部分は原則として時間外労働となります。

【解説】法定労働時間とは、1日8時間・週40時間と定められた労働時間の上限であります。残業(時間外労働)または法定休日に労働させる場合には、事前に「時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)」を労使で締結し、労働基準監督署への届出が必要であります。ただし、小規模事業場に係る特例もありますが、原則週40時間制が全面適用となります(労基法第32条、第40条)。

Q:残業しても定額の手当しか支払われない。

A:適切な時間管理が求められ、時間外労働に対しては割増賃金の正当な計算・支払を要します。

【解説】事業場外労働で労働時間の算定が困難な場合は、みなし労働時間制を適用できますが、その場合でもすべて法定の取り扱いを要します(労基法第38条の2)。
みなし労働時間制は、労働時間の算定を適切に行うためのもので、(1)事業場外労働と(2)裁量労働に関するものの2種類があります。前者は、事業場外で労働するため使用者の指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難な業務の場合に適用されます。従って、事業場外で労働する場合であっても労働時間の算定・管理ができるときは、この制度を適用できません。

Q:退職したいのに、なかなか辞めさせてくれない。

A:労働者には「退職の自由」があります。辞めたいときは「退職届」を申し入れてください。

【解説】雇用の期間に定めがないときは、解約(=退職)の申し入れから2週間が経過すると雇用契約が終了します(民法第627条1項)。
(1)期間の定めのない雇用の場合(民法第627条)
労働者には「退職の自由」があります。そのため、退職を希望する労働者は自由に退職することができ、退職の意思表示から2週間が経過すると雇用関係が終(=退職)します。
(2)期間の定めのある雇用の場合(民法第628条)
労働者の「退職の自由」そのものが否定されている訳ではありませんが、労働者からの解約(=退職)の申し入れについては「やむを得ない事由があるとき」に制限されています。この場合、退職の理由が「やむを得ない事由」に該当すると判断されるかどうかは個々の事例によるため注意が必要であります。
なお、1年を超える有期労働契約の場合で、契約の初日から1年を経過した日以降は、いつでも退職することができます(労基法第137条)。
(3)明示された労働条件と異なった場合(労基法第15条)
労働契約の締結の際に示された労働条件が事実と異なる場合には、労働者は労働契約を即時解除できます。帰郷のための旅費を要する場合には、使用者は負担しなければなりません。

Q:突然、解雇を通告された。

A:解雇の理由を確認し、退職する意思がない場合は、はっきりと意思表示を示してください。

【解説】解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効となります(労契法第16条)。労基法上の手続きとしては、少なくとも30日前にその予告をするか、予告をしないときは平均賃金の30日分以上の支払いを要します(労基法第20条)。

Q:契約社員として10年働いているが、毎年の契約更新が不安だ。

A:反復更新して5年を超える契約には無期転換ルールが適用されます。

【解説】同一の使用者との間で有期労働契約が通算して5年を超えて反復更新された場合には、労働者の申し込みにより、使用者は無期労働契約に転換しなければなりません。無期労働契約への転換ルールは、2012年の労契法改正で新しく規定されたルールです。有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、労働者が期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の申し込みをしたときは、使用者はこの申し込みを承諾したものとみなす、という制度です(労契法第18条)。この規定の適用により、当該労働契約が満了する翌日から、無期労働契約が成立することになります。

Q:仕事で負傷したが、「労災保険扱いにはしない」と言われた。

A:労災保険は、雇用形態の如何を問わずにすべての労働者に適用されます。

【解説】労災保険は、原則として全産業・全事業所が強制加入であり、雇用形態に関係なく、雇用される労働者全員が適用対象となります(労災保険法第3条)。業務上または通勤途上で労働者が負傷した場合、疾病にかかった場合等について、被災労働者またはその遺族に対し所定の保険給付を行う制度です。

Q:職場でセクハラを受けて悩んでいる。

A:会社の相談窓口へ相談をしてください。窓口がない場合は労働組合のセクハラ対策担当者もしくは都道府県労働局へ相談をしてください。

【解説】セクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」)に関する裁判では、企業の責任が問われるケースも増えています。企業には「従業員が働く上で権利を侵害されないよう使用者として配慮する義務」があります。男女雇用機会均等法(第11条)では、職場におけるセクハラについて、事業主に防止措置を講じることを義務づけています。事業主は、労働者個人の問題として片付けるのではなく、雇用管理上の問題と捉え、適切な対応をとる必要があります。

Q:職場の上司から、ミスを厳しく叱責されたり、社員の前で罵倒されたり、頭を小突かれたりする。精神的に滅入ってしまい、夜も眠れないときがある。

A:使用者には労働者に対する安全配慮義務があります。当時の状況をできる限り詳しく記録し、証拠の確保をしてください。

【解説】いじめやパワー・ハラスメント(以下「パワハラ」)は人格権侵害の不法行為であり、こうした行為に対しては、加害者だけでなく使用者にも民法上の責任が問われる場合があります。同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為です。

<パワハラの類型>

  1. 暴行・傷害…身体的な攻撃
  2. 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言…精神的な攻撃
  3. 隔離・仲間外し・無視…人間関係からの切り離し
  4. 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害…過大な要求
  5. 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと…過小な要求
  6. 私的なことに過度に立ち入ること…個の侵害